全米屋外選手権男子5000m:ポール・チェリモ13分08秒の大会記録で圧勝しファラーに挑戦状を送る

アメリカのカリフォルニア州サクラメントで開催されている全米屋外選手権の男子5000mでポール・チェリモが成し遂げたことを説明するのには、これが一番の言い方であろう。彼は13分08秒62、2位と7秒以上の差をつけて5000mを圧勝した。そして、2005年にティム・ブローが出した13分12秒76の大会記録を塗り替えた。

彼のこの勝利は、今年3月に行われた全米室内選手権の2マイルで優勝した時のようである。そのレースではラストスパートで先頭に踊り出たが、今回の勝ち方とは違った。今日のレースでチェリモは、スタートから抜け出して、最初の1周を60秒で走った。

他の選手たちは室内も屋外も、負けを認める白旗を上げ、チェリモに勝利を譲ったと非難されるかもしれない。しかし、このサクラメントでは状況は違った。エリック・ジェンキンスの5000mの自己記録は13分05秒、ライアン・ヒルも13分05秒の記録を持っている。ベン・トゥルーは13分02秒だ。しかし、今夜チェリモは選手権のレースで終始、独走で13分08秒の記録を出した。しかも気温は約26.5℃、1周目を60秒で走り出した後である。他の選手には、彼に行かせる以外の選択肢はなかった。彼はアメリカで最高の5000m選手であるからだ。

「みんな、チェリモの調子は今、別世界にいるぐらいに良いということを知ってるよ。」

とライアン・ヒルは語った。

レースの勝負は早い段階でついていた、と言える。しかし、ロンドン世界選手権の残り2枚の切符を賭けての勝負は、最後の1周まで持ち込まれた。レースの序盤、エマニュエル・ボアが何周か集団を引っ張ったが、トゥルーが1マイルを過ぎたあたりから上がってきて、6周目ぐらいまではそのポジションを守った。

トゥルーは後続集団を、3000m8分04秒33で引っ張り(チェリモは単独走で7分55秒55で通過)、3周残った時点で、残りの2枠を賭けて4人の選手が残っていた。トゥルー、ジェンキンス、ロペス・ロモン、そしてヒル。その4人のうちでジェンキンスだけが唯一5000mでアメリカ代表になったことがなかった。

4人の選手はラスト1周の鐘が鳴るまで一緒で、その後ジェンキンスが集団から一つ出て引っ張るかたちとなった。バックストレッチで、ジェンキンスは後続を引き離し、最終コーナーに入るとその差はかなり広がっていた。ラスト1周を54秒06で走り、それによってジェンキンスはチェリモに次いで2位でゴールし、初めて代表入りを果たした。ロンドンへ残された切符は、あと一枚。2013年のライアン・ヒルがそうであったように、今回も残り150mでトゥルーを離し、ライバル選手に打ち勝ったのである。

しかし、今夜の主役はポール・チェリモである。彼は13分08秒というタイムをいとも簡単に叩きだし、モー・ファラーに挑戦状を送りつけたかたちとなった。

「モー・ファラーは非常に強い選手だ。彼に勝つためには、もっと、もっと、もっと強くならなきゃいけない。」

 

【レース結果】(全ラップはこちらから, Men’s 5,000mを選択)

Pl. Athlete / Team Cnt. Birth Result Score
1. Paul CHELIMO USA 90 13:08.62 1178 SB
2. Eric JENKINS USA 91 13:15.74 1153
3. Ryan HILL USA 90 13:16.99 1148 SB
4. Ben TRUE USA 85 13:17.94 1145 SB
5. Lopez LOMONG USA 85 13:21.74 1131 SB
6. Thomas CURTIN USA 93 13:29.64 1103
7. Trevor DUNBAR USA 91 13:30.89 1099
8. Reid BUCHANAN USA 13:31.40 1097
9. Riley MASTERS USA 90 13:40.14 1067
10. Emmanuel BOR USA 88 13:45.26 1049
11. Andy TROUARD USA 13:49.19 1036
12. Joe STILIN USA 89 13:55.04 1016
13. Kirubel ERASSA USA 93 14:04.02 986
14. Craig LUTZ USA 92 14:04.74 984
15. David ELLIOTT USA 14:09.69 968
16. Ben RAINERO USA 14:11.14 963
17. Clayton YOUNG USA 14:23.88 922
Chad NOELLE USA 93 DNF

アメリカにおいて最も圧倒的な5000mであった

バーナード・ラガトが長らくアメリカにおける男子5000mを支配してきた。そして、チェリモは常にラガトを見上げる立場であった。最近この二人は仲が良く、レース前にラガトがチェリモに

「絶対にお前が勝つ」

とまで言ったそうだ。そして今や、チェリモはラガトが長らく君臨していた座を引き継ぐ者になるであろう。ラガトはその伝説的なラストスパートでレースに勝利してきたが、アメリカ自衛隊 (US Army)のWorld Class Athlete Programのメンバーであるチェリモは、スタートからゴールまで先頭に出てこれまで2度優勝のタイトルをで手に入れてきた。

ラガトと同じぐらい素晴らしいランナーであり、スタートしてからすぐ先頭に立ち、その走りを試すということは、特別な自信が必要とされる。でも、ベストな状態で誰もがそれを承知しているとき、自分のやりたい通りにレースができる。チェリモにとって今夜のレースは、試合というよりは実験だったのだ。

「自衛隊にいると、いつも強くなれと言われるんだ。今日は、戦争にいくような気持ちだったよ。準備は万全だったし、戦略もあったし、すごく嬉しいよ。自分の身体がどこまでできるか試してみたいと思っていたんだ。ロンドン世界選手権でそれをやるには、まずはその前に試さないといけないからね。自分の身体を試して、それに向けてトレーニングする。自分にとってはそれがすごく良かった。それと、いつもトラックレースを見ていると、文句を言っているファンもいるようだ。スローペースで入り、残り少しでペースを上げる(ネガティブスプリット)、そんなレースにはみんな飽き飽きしている。今日は観客も喜んでくれたんじゃないかな。自分のしたいレースをみせることができた。スローペースから最後上げるレース展開でも勝てたと思うけど、今日は高速レースにしたかったんだ。」

チェリモはプレフォンティン・クラシックでファラーに約10秒という大きな差を開けられ負けを喫していた。でも今夜のチェリモはその時に比べるとはるかに良かったし、ギャップを縮める時間はまだ一か月半も残されている。ファラーはどんなペースになっても最後のスパートがあるというのはすでに証明されているので、レースは厳しいものになると予想される。

ファラーのリオオリンピックでの優勝タイムは13分03秒。まだチェリモは自分の限界に達していなようだが、リオオリンピックで銀メダルを獲った彼の実力はまだ恐ろしいものを秘めている。また、ラガトが持つアメリカ記録12分53秒60のタイムをチェリモが塗り替えることができるのかも、楽しみの一つである。

チェリモの5000mでの最速タイムは13分03秒と13分08秒であるが、いずれも選手権の決勝で出したタイムである。前者は去年のリオオリンピック、そして後者は今夜のレースである。

エリック・ジェンキンス、満を持して代表入り

ジェンキンスはオレゴン大学ではスター選手だった。(オレゴンに来る前ノーザンイースト大学でもすでに素晴らしい選手だった。)近年の全米大学屋外選手権5000mの優勝者の中では少ないアメリカ生まれの選手であり、去年の全米室内とオリンピックトライアルを逃してからは、代表入りするのは時間の問題だった。今夜のレースでジェンキンスは、ヒルやトゥルーよりもいい走りをし、ラスト1周の54秒06は素晴らしいものだった。結果、13分15秒でゴールした。

春の厳しい時期を乗り越え、ライアン・ヒルのラストスパートは健在していた

2年前のこのレースで優勝したヒルは、今年の1月から脚とふくらはぎを故障していたものの、堅実な室内シーズンであった。その間、練習は変わらずにしていたが、調子は万全とまでではなく、今夜のレース前に唯一予定されていたプレフォンティン・クラシックの5000mは棄権していた。

今夜のレースについて、アメリカ代表入りできるのは

「50%ぐらいの確率だろうと思っていた」

と語った。最後の1周に入ったところでさえも、自分がどれだけスパートできるか分からなかった。ヒルの持っている実力は代表入りするのには十分であったし、ロンドンまであと7週間、コンディションを整えるのにはあと少し時間がある。調子は上がってきているようだ。これまでのヒルの世界選手権での記録は、2013年のモスクワでは10位、2015年の北京では7位だった。今回は、メダル争いできるまでに調子を上げてくることはできるだろうか。

ベン・トゥルーに正当な評価と同情を

全米屋外選手権のすべてのレースを見逃せないのは、それが100か0かの戦いであるからだ。トップ3に入れば世界選手権の代表となるが、4位になれば我々と同じようにテレビで世界選手権を見なければいけない。この厳しい条件を当てはめると、ベン・トゥルーはまた4位に終わり、何も手に入れることができなかった。(彼は2013年も5000mと10000mで4位だった。)

しかし、トゥルーには尊敬すべき部分がたくさんある。この26℃以上の気温でほぼ単独走になったが13分17秒を記録した。彼は代表入りはできなかったものの、ラスト250mでジェンキンスに引き離されるまで集団につき、自分の走りをした。

レース初盤でトゥルーは厳しい決断を強いられた。チェリモについていくか、自分のペースを守り徐々にチェリモを巻き返すか、スローペースから最後の勝負に持っていくか。トゥルーは2013年に最後の戦略を選択し、敗北を喫している。(残り1マイルでペースを上げたが、1マイル4分切りで走っても、代表入りできるタイムを残すことができなかった。)だから今夜は、チェリモを巻き返す作戦に打って出たのだ。残念ながら、チェリモや他のライバルたちも巻き返すことはできなかった。

「後ろに彼らがいてスパートしてくることは分かっていたし、自分を抜いてくることも分かっていた。彼らが追いついたときにその集団につければと思っていた。残り100mまでは行けると思ったが、ライアン・ヒルがゴール前でもう一段回ギアを上げ、引き離された。長く後方でゆっくり走ってるとこうなるんだよね。」

トゥルーは2015年に代表になったが、2019年には33歳になっている彼にとって、ロンドンは最後のチャンスだったかもしれない。マラソン以外で33歳の選手で代表入りしている人はほとんどいない。しかし、そこにはいつだって希望がある。

去年オリンピックトライアルで優勝したバーナード・ラガトはその時41歳であったのだから。

 

レッツラン記事

http://www.letsrun.com/news/2017/06/paul-chelimo-crushes-field-sends-message-mo-farah-meet-record-1308-victory-5000-2017-usas/

 

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