(過去記事) 世界ハーフでビダン・カロキが優勝候補に挙がる理由、アスベル・キプロプ、ロナルド・ケモイの活躍に期待 – ケニアからのレポート

Why Bedan Karoki Is The Favorite At The World Half Champs, Expect Big Years From Asbel Kiprop And Ronald Kwemoi & More News From Our Man On The Ground In Kenya

2016年3月22日

ケニア、リフトバレー州の州都ナクル (標高1850m)。世界中の陸上ファンは、先週末にポートランドで開かれたIAAF世界室内選手権に注目していただろう。しかし、先週金曜日にケニアのナクルで開かれた小さな陸上競技会が、興奮を巻き起こしていたのを知る人は少ない。レースを観戦した後、それが何故なのかがすぐに理解できた。

ダイヤモンドリーグ、世界選手権、オリンピック以外では、もっとも多くの才能ある選手たちが集まった競技会だと言えるだろう。去年 (2015年)は過去最高出場数となる1400人もの選手がこのナクルレースに出場した。今年も去年の出場人数に迫るぐらい多くの選手が集まった。デイビット・ルディシャや、世界室内選手権に出場したキャレブ・ディク、アイゼヤ・コエチ、オーガスティン・チョゲなど、何人かの有名選手は出場していなかったが、それでもこの競技会にはたくさんのケニアのスター選手達が集まった。

エリート選手もアマチュア選手も、みんな同じスタートラインに立った。アスベル・キプロプ、トーマス・ロンゴシワ、ティモシー・キタムなども顔を揃えた。このレースが世界の多くの人に知られていないからといって、決してレベルが低いわけではない。去年は、キプロプを持ってしても1500mでなんとか4位に入るのが精一杯だった、そんなレベルである。先週の金曜日と土曜日に開催されたナクルレースのレベルも、相当高かった。このレースを実際に目にして、次の屋外シーズンに向けて下記の5つのことを感じた。

①レバト・カノーバ:“ビダン・カロキが世界ハーフ選手権での優勝候補となるだろう”

先週のナクルレースに集まった選手の数やレベルの高さに関して、正確には分からない
が、1500mは200人以上いたし、5000mに関しては300人以上の選手が集まっていた。800m予選は各組7、8人に限られてはいたものの、1500m予選には各組25人ほどの選手がいた。このトラックには、ケニア中の才能が集まっていると言っても過言ではない。しかし、その中でも一際目立った選手が一人いた。ビダン・カロキだ。

去年の世界クロカンでは2位、北京世界選手権10000mで4位に入っているカロキは、こ
の日1500m予選を圧勝していた。(金曜日が予選で土曜日が決勝であったが、多くの選手た
ちはこぞって土曜日のレースを取りやめるため、予選の方が重要だと、いろんなコーチや
選手が言っていた。事実、土曜日に行われた800m優勝者は、金曜日のレースを走っていな
い。ケニアは、ルールや規則に関してはとても緩い)

カロキのこの日の優勝タイムは3:42で、最終ラップは57秒だった。そして、この日に一番速く走ったのが、カロキだった。ティモシー・キタムの3:43が、この日に2番目に速いタイムで、予選3組目に出したタイムである。カロキのタイムを鼻で笑う前に、これを知っておいて
ほしい。ナクルのトラックは土トラックで、石のレールは壊れているし、1レーンには穴
があいている場所もある。そして、標高約1830mのトラックだ。

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©2016 LetsRun.com

この1500mの結果に満足しなかったのか、カロキは1500mレースの45分後に行われた5000mレースに参加した。それは、私がこれまで見たレースの中でも一番の“満員状態”といえるのレースだった。参加選手の中には、トーマス・ロンゴシワ(5000m、12:49)、ポール・コエチ(3000mSC、7:54)、ジェリアス・ビレチ(3000mSC、7:58)、ニクソン・チェ
プセバ(1500m、3:29)などなど、他50人もの才能あふれるケニア人選手がいた。

カロキはここでもトラック王者であることを見せつけた。13:38のゴールタイムで、1200m地点からレースに決着をつける形で圧勝した。彼の最後の3周のラップタイムは、59秒、57秒、58秒だった。私の隣に立っていたのが、あの伝説のコーチ、レナート・カノーバだった。この後、イギリスのカーディフで行われる世界ハーフマラソン選手権についてカロキをどう思うか、カノーバに尋ねると、彼は強調して“カロキは優勝候補だと”言った。

もしカノーバが、カロキを指導していたら、モー・ファラーやジョフリー・カムウォロルと競うレースの1週間前に、1500mと5000mの2種目を同じ日に2本走らせないだろうと言っていた。この予想を立てたのはカノーバだけではなかっただろう。カロキは特別な選手だという雰囲気が競技場全体を覆っていた。彼の走りのフォームが、別次元に達しているようだった。

②アスベル・キプロプは2016年シーズンに向けて準備万端

キプロプは、歴史的だった2015年の実績を、今年も残せるのか?ナクルレースの前日、私は800mの選手であるティモシー・リモ(800m自己記録, 1:46.09)と今年開催されるオリンピックでのケニア人選手の活躍について、話していた。

アスベル・キプロプの名前が出てくると、ティモは彼の友達でもあるキプロプにとって最高の1年になるだろうと断言した。

「彼がこれほど集中しているのを見たことがないよ。彼は、些細なことであっても気を遣って正しいトレーニングをしている。世界記録を出すだろう」

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©2016 LetsRun.com

ケニア警察所属のキプロプ

800m予選2組において、彼の高い集中力を見ることが出来た。ケニア警察の青いランシャツを着たキプロプは、最後の400mを53秒で走り抜け、1:47で優勝した。いとも簡単に走っているようだった。キプロプが今より速くなるのを考えるのは、少し怖い気もする。去年、彼は1500mを3:26.69で走っており、2001年以来の1500mにおいて、一番速いタイムであった。世界記録までたったあと0.69秒である。そして、2015年はさらに世界選手権とダイヤモンドリーグのタイトルも手に入れた。

③アスレチック・ケニア、WADAとIAAFとの状況悪化

ナクル競技場を歩くと、見逃すことの出来ないものが目に飛び込んでくる。土ぼこりのトラック、老廃した第1レーンは、衝撃的であった。トラック内に掲げられた多くのアスレチック・ケニア (AK=ケニア陸連)の旗もまた、強い印象に残っている。赤と緑のアスレチック・ケニアのロゴマークとともに、大きく目立つ文字で“SAY NO! TO DOPING”と書かれていた。

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©2016 LetsRun.com

先月、ケニアは反ドーピング運動の強化案について、WADAの提出期限を守らなかったのだ。もし、ケニアが4月05日までに新しい規則を通さず、反ドーピング機構に適切な資金を充当しなければ、WADAの規則に従ってないと見なされ、2016年オリンピック出場も危ぶまれる事態になりかねない。

少し話は逸脱するが、私はこのナクルレースにベルギーの友人と一緒に参加しており、彼は今年の年末に選手のエージェントになる予定でいる。彼は最近、エージェントとして登録するためにナイロビにあるアスレチック・ケニアを訪れている。その面談で聞かれたことを彼は教えてくれたが、全ての質問がドーピングに関することだったという。

④今年は、ロナルド・ケモイから目が離せない!

800m予選2組、ロナルド・ケモイは1:48のタイムで2位に入った。このレース後にカノーバと話をしていなければ、彼の結果について深く考えることもなかったであろう。彼との会話の中で、カノーバが最近指導している選手について話を聞いた。彼の選手の中には優秀な選手が多かったが、中でもケモイの話をするとき、カノーバは一段を興奮しているように見えた。

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©2016 LetsRun.com

ケモイとカノーバコーチ

「ケモイには才能があり、1500mと5000mの世界記録を破れる力があると信じている」

そうカノーバは述べていた。今日のレースでケモイが、

「なんでもっと速いタイムで走らなかったのか?」

と尋ねると、カノーバは、

「今日の競技会は練習の一環である」

と言った。その証拠として、彼らがこなしているインターバルトレーニングの日誌を見せてくれた。見たこともないほどのキツい内容のインターバルトレーニングであった。

ケモイは既にトラックで素晴らしい成績を残している。彼がまだ18歳だった2014年には、1500mを3:28.81の世界ジュニア記録で走っている。ローザンヌDLで優勝、コモンウェルスゲームズ、アフリカ選手権でもメダルを獲得。昨年1500mを3:30、5000mを13:16で走っている。4つのダイヤモンドリーグに出場して、6位、5位、3位、5位という成績を残している。

しかし、カノーバにしてみれば、ケモイはまだ最高潮には達していなく、今年こそが彼がジュニアのトップから、シニアの世界の選手たちを脅かす存在へと一皮むける一年となるのだ。ケモイと一緒にトレーニングしているティモシー・リモも、これに同意していた。もしこれが本当に起これば、2016年は2人 (キプロプとケモイ)のケニア人選手が前人未到の1500m3:25を出す年になるかもしれない。

⑤トーマス・ロンゴシワはいい奴

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©2016 LetsRun.com

ナクルレースが終わったあと、私はアクシデントに悩まされていた。イテンに戻る途中に車が故障し、他に帰る手段を見つけなければナクルから帰れない状況に陥ったのだ。ケニア西部を訪れたことがあればわかると思うが、ケニアを動き回るのはそう簡単なことじゃない。私は1泊だけホテルを予約するつもりでいたが、そのときカノーバのチームのコーチが声をかけてくれて交通手段を見つけてくれたという。

他のコーチ達と一緒に車に乗せてくれるのかと思っていたが、驚いたことに、トーマス・ロンゴシワは誰も乗っていないセダンに、私を乗せてくれたのだ。彼はイテンに戻る途中に、私が立ち往生していることを聞きつけ、わざわざ私を乗せるために引き戻してくれたのだ。感謝以外の何ものでもなかったが、このケニアのスター選手の優しさには本当に驚いた。

ロンゴシワといえば、2012年のロンドンオリンピックの男子5000mの銅メダリストであり、歴史上5000mにおいて12:50を切った16人のうちの1人だ。彼はレースの賞金などで多額のお金を稼ぎ、ケニアではセレブである。平均年間収入が約1200ドル(日本円で約13万円)のケニアにおいては、彼が稼いだお金は信じられない金額である。ケニア西部に行くと、その平均収入は3分の1ほどに下がってしまう。

彼は3人の子の父親でもあり、子どもたちと週末を過ごすところに、私を拾ってくれたのだ。
彼は、助けが必要な人がいたら、全く面識がない人でも止まって助けていた。

想像してみてくれ。もし、スティーブン・カリー(NBAの選手)が、ゴールデン・ステート・ゲームの後にファンが帰る車がないと聞きつけ、彼の忙しい予定を無視してまでも、競技場に戻ってファンを車に乗せるだろうか?彼がそんなことをしたら、ESPNはそのニュース一色になるだろう。このことをロンゴシワに言うと、彼はただ笑ってこう言った。

「僕も君も同じ人間じゃないか、人はいつだって互いに助け合うべきだ」

アメリカにもトーマス・ロンゴシワのようなスポーツ選手がもっといるといいのだが。彼の行為は、人間の品格を体現していた。

 

レッツラン記事

http://www.letsrun.com/news/2016/03/bedan-karoki-favorite-world-half-champs-expect-big-years-asbel-kiprop-ronald-kwemoi-news-man-ground-kenya/

 

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